こんにちは。  2016 年 6 月に発売した、「〜ビールにまつわる言葉をイラストと豆知識でごくっと読み解く〜 ビール語辞典」の著者兼イラストレーターのリースえみです。 NY のブルックリンと、京都を拠点に活動しています。ここでは NY の街で出会える、ビールやその周りのカルチャーについて、ビール語辞典に出てくる豆知識や歴史なども絡めてご紹介していきます。

 

情勢が騒がしいアメリカでは、この期に及んで環境問題に目を瞑る権力者達が目立ってきていますが(やれやれ)、これはビール飲みからしても他人事ではありません。地球のことも考えながら、ビールをおいしく飲むにはどうすれば良いのでしょう?

ビールを輸送する際に消費される燃料だけでなく、パッケージングに使われる資源も気になります。瓶や缶をたくさん消費するくらいなら、いっそ家にタップが欲しい…なんて夢見るビール好きも少なくないのかもしれませんが、一般市民からするとそれはちょっと大変。海外や他地域のビールを探求する気持ちも大切ですが、普段はパッケージングに使われる資源を削減するためにお店で生ビールを飲んだり、家飲みなら郵送費を削減するために地域のビールや、量り売りのビールを選んで買って帰ったりなど、小さいながらも工夫は可能です。

量り売りといえば、ビール語辞典では「グラウラー」という、タップビールを持ち運ぶためのガラス製の容器を紹介しています。アメリカでは 64 オンス( ​1,892.7 ml )のグラウラーが一般的 で、一回使うと 5 本分の缶/瓶は節約できます。論理的にはとても合理的なグラウラーですが、実際のところ​日本ではまだまだビールの量り売りは少ないですし、ニューヨークでもまだまだ浸透しているとは言えません。おいしい生ビールをエコに買えるのに、どうしてなのでしょう?

一番の原因は、グラウラーに入れたビールの鮮度の落ちやすさにあります。工場でのビールの瓶・缶詰めは、鮮度を保つため、なるべく酸素が入らない技術のもと行われます。通常のタップはすぐに飲むことを前提につくられているので、一度グラウラーに注ぐと鮮度が落ちてしまう上、飲みきるのに時間がかかるとその分さらに鮮度が落ちていきます。つまり、すぐに飲みきれる保証が無い限り、グラウラー買いは難しいのです。

二番目の原因は、グラウラーの重さと大きさにあります。所有するのに抵抗があったり、持っていてもビール屋まで持って行くのが億劫だったり、思い立ったときには手元になかったり…。人間はとても横着です。

ところが最近、そんな「グラウラー買い」のハードルを打倒してくれるお店を発見しました。ブルックリンのウィリアムズバーグを走り抜ける BQE 高速道路の脇にひっそりたたずむ一軒のビール屋、『 Beer Boutique (ビア・ブティック)』です。「ブティック」とは言えど、外見は一見デリ(近所の売店)のような、謙虚なたたずまい。 5 年前から営業していたにも関わらず、「これはビール屋だったのか!」と初めて買い物に行ったのはついこの間の秋のことでした。

木造の店内は温かい雰囲気で、タップビールを含め、 200 種類以上のビールがずらりと並んでいます。タップビールは全て持ち帰りの量り売りで、従来のガラス製とは違ってなんとペットボトルの「グラウラー」で販売されています。アメリカでも珍しいこのシステムは、通常のタップとは違って容器に酸素を入れず、泡立たせない独特の技術が備わっています。店員さん曰く、こちらはロシア生まれのタップシステムで、導入には通常のタップシステムに比べてかなりの費用がかかるのだとか。使用される特殊のペットボトルは衛生的にも安全で、 100 % リサイクル可能だそう。思い立ったときにはすぐに買いに行けるし、持ち運びも気楽な上、通常のグラウラーに比べて鮮度も保たれるので、すぐに飲みきらなくてはというプレッシャーもありません。

常に 10 種類揃うタップビールは、主にニューヨークや隣接する州で造られている地域のビールで、 IPA からスタウト、ドッペルボックからバーレイワインまでスタイルもさまざまです。ご自身もロシア出身だというオーナーさんは、どのビールに関しても詳しく、試飲がてらフレンドリーに教えてくれます(試飲しすぎてごめんなさい)。

初購入は、ワシントン D.C. にある『 3 Stars Brewing 』の『 Above the Clouds (雲の上)』 というセゾン。試飲のときに香りが気に入ったので大きめのワイングラスで飲んでみると、ふわっと広がるホップのフルーティーなアロマが爽やかで、 6.3 % のビールも軽く感じられました。少し濁った綺麗な黄色も上品。この日晩御飯だったステーキとも相性が良くて、日持ちすることを良いことに 1 リットル買ったビールもすっからかんに。

トレンディーなビール屋がどんどん生まれている NY ですが、こだわりながらも日常的に、そしてエコに買い求められるお店は意外と貴重です。2 回目からは童顔な私のビール好きにひるむことなく次々に試飲を進めてくれたBeer Boutiqueには、確実に頻度を増して通っています。

 

◼︎『ビール語辞典』について
毎日何気なく飲んでいる、でも実はとっても奥深い文化や歴史の塊であるビールの世界に一歩踏み出したい人に向け、ビールにまつわるあらゆる言葉を
豊富なイラストとともにまとめた絵辞典。リースえみ著、瀬尾裕樹子監修

ビール語辞典: ビールにまつわる言葉をイラストと豆知識でごくっと読み解くビール語辞典