ビールを構成するモルト、ホップ、酵母、水。BEERISTA.TOKYO では、その中でもあまり語られてこなかった「水」にフォーカスを当て特集を進めてきましたが、今回軽井沢に醸造所を構えるヤッホーブルーイングにお伺いし、 BEERSTA.TOKYO の編集長である瀬尾が『軽井沢高原ビール』のマーケティングを務める岡秀憲さん、ヘッドブルワーの森田正文さんに「水」に関するお話を聞いてきました。

 

浅間山で涌き出て麓まで流れてくる特別な水は、『軽井沢高原ビール』をはじめ、その周辺に住む人の生活用水としても使われています。そんな“特別な水”の特徴と、その水で造られる地域に根ざしたこだわりのビールについてのインタビューです。

 

浅間山の水だからこそ造れる地元に根ざしたビール

—— 今日はよろしくお願いします。ビールを構成している大きな原材料には、麦芽(モルト)、ホップ、酵母、水がありますよね。その中で今回は、「水」に焦点を当ててお話しを伺おうと思っています。

 

 

岡さん(以下、敬称略) よろしくお願いします。水ってビールの原材料のひとつではあるんですけど、でも実は今まで、「水」という切り口でインタビューを受けたことがあまりないんですよ。

 

—— そうなんですね。ヤッホーブルーイング(以下、ヤッホー)のビールは、長野県と群馬県をまたぐ浅間山からの伏流水を使用していますよね。その中でも『軽井沢高原ビール』は地元に根ざしたブランドとして、『よなよなエール』よりも古くからこの醸造所で造られてきたと聞きました。

 

岡 『軽井沢高原ビール』は今から20年前に、星野リゾートの星野佳路代表が軽井沢の別荘の方に愛され楽しんでもらえるようなビール、というコンセプトでスタートしたんです。

 

—— 創業当初からあるんですね。

 

岡 そうです。『軽井沢高原ビール ワイルドフォレスト』が一番古いブランドであり、このエリアの中で最も飲んでいただいているベストセラーのビールです。『よなよなエール』よりも 1 ヶ月早く発売されていて、今年で二十周年になります。

 

—— 『ワイルドフォレスト』をはじめとして、ヤッホー創業当初からある『軽井沢高原ビール』は、より地域に根差したコンセプトということですが、具体的に、軽井沢のどんな部分を凝縮しているんですか?

 

岡 そもそも、ここに醸造所があるひとつの理由が水なんです。ここからも晴れていると綺麗に見える浅間山からの伏流水というのは、この日本の中でも、とっても特別な水が採れる場所なんです。というのは、日本のほとんどの土地が軟水なんですけど、ここはだいたい硬度が 200mg/l の硬水が採れるところなんですよ。

 

 

岡 イギリスを代表するエールビールに『バス ペールエール』というものがあります。あのエールが生まれたのは、イギリスのバートン・オン・トレントという場所ですが、イギリスというのは石灰岩が多い場所なので、水がとっても硬いんです。バートン・オン・トレントの場合、硬度がだいたい 600mg/l  という非常に硬い水なんですけど、そこで造ったビールがとっても美味しい。それで私たちも『バス ペールエール』と同じエールビールを造ると考えた時に、ここなら中硬水の水が採れると考えたのも、この場所に醸造所を作った理由の中のひとつなんです。

 

浅間山の水の特徴

—— ヤッホーで働いてこの近くに住んでいる皆さんは、ビールに使用するだけじゃなく、同じ硬水で生活してると思うんですけど、大変だったことってありますか?

 

 

岡 浅間山の水を飲んだら、お通じが良くなったって人もいますよ。この辺りは、水が採れる源泉がいくつかあるんですけど、実はその源泉でも硬度が違うんですよ。私が住んでいるところの水は、その中でも比較的硬度が硬いほうかなって思います。飲んでもすぐにわかるし、ヤカンに水を入れて沸かすとカルシウムが付いて、すぐ白くなっちゃいます。

 

—— 私は嬬恋(群馬県嬬恋村)に住んでいたことがあるんですけど、その時お風呂が濁ったりヤカンが白っぽくなったりしたって印象はあまりなかったので、同じ浅間山の近隣に住んでいても、源泉が違うからそうならないのかもしれませんね。

 

岡 私は昔ビールの勉強でイギリスに行ったことがあるんですけど、ヤカンの内側が白くなる感じが、ここの水ととっても似てるなって思ったんですよね。

 

——    そうなんですね。飲むとどんな感じでしたか?

 

岡 パワフルですね。スルスルとは飲めなくて骨太で強いパンチのある水。ですから、運動をした後に蛇口から水を出してゴクゴク飲むには、ちょっと飲みづらく感じる人もいるかもしれないですね。水が水であることを主張する感じ。でも硬水は、個人的には、ミルクティーを淹れる水としては最高なんですよ。

 

 

—— 濃く出たりするんですか?

 

岡 そう、とっても濃く出るんですよ。アールグレイのミルクティーには、本当にぴったりな水です。でも、地元の方と話をした時に、『コーヒーを飲むにはちょっと向かないかな、好みじゃないな』、っていうのは聞いたことがあります。でも、紅茶には最高ですね。

 

森田さん(以下、敬称略) さっきカルシウムで白くなるって話出ましたけど、ここでもストーブの上に置いた鍋に水を入れて置いておくと、蒸発したあとカルシウムで中が真っ白になっちゃうんですよ。

 

 

—— 本当だ……!

 

岡 私たちが使うテイスティンググラスも、洗っても白い水滴がうろこ状にどんどん付いてしまうんです。だから、食器を洗った後には必ず蒸留水で流すっていうルールになってます。

 

 

—— 白くなっちゃってますね。

 

森田 ミネラルなんだと思います。

 

岡 付いちゃうとなかなか取れないので、忌々しくなってくるんですよ。また付いてる~って(笑)。

 

森田 この白いのは、クエン酸で溶けますよ。

 

—— でも、ひと手間かけないといけないのは大変ですね。

 

森田 僕の家の風呂場の鏡も、洗面台も白くなるんです。あとキッチンのシルバーの部分もぜーんぶ白くなっちゃうから、生活に使う水としてはちょっと向かないのかもしれないですね。たまに、都内のビジネスホテルに泊まると、洗面台などの水周りがピカピカでびっくりするっていう。

 

—— (笑)。ビール造りにおいて、硬水のビールに対する影響はどう感じますか?

 

岡 硬水でビールを造るっていうのは難しい部分もあるんです。もともとミネラルが入ってるので。また、醸造所をオペレーションするという上では、これまた難しい。カルシウムがボイラーの中で付きやすいとかいろんな問題があります。

 

森田 軟水か硬水か以前に、もとの水の清浄度がビール造りには大事だと思っています。例えば、大腸菌類の多い河川から採ってきた水は、濾過をしっかりしないといけないし、殺菌剤もいっぱい入れなくちゃ飲料水として上水に流せないんですよ。でも、この辺の水って基本的には細菌的なリスクが少ないので、一般的な塩素濃度が少ない気がします。僕、東京から茨城に引っ越して、そのあとここへ来たんですけど、この辺の水って薬品臭が少ないなというのが、すごい良いとこだなって思います。

 

—— ビール造りにとって、軟水か硬水かももちろん大事だけれど、クリーンさ、綺麗さという意味では、とても良い水だということですね。

 

森田 そうですね。諸外国と比べると特に。それに、基本的に日本の水は全部綺麗だとは思うんですけど、薬品臭が少ないのは、とってもポジティブなところだと思っていますね。でも正直に言うと、ビール“造り”において硬水はあんまりいいことないんですよね(笑)。

 

—— ビール“造り”においてはですか。

 

森田 “ビール”自体に使う水の成分はまったく取り除かずに使っていますが、設備に対しては取り除いてあげなきゃいけない部分があって。

 

—— なるほど。ビールの液体に残る部分はいいけど、釜に白く残ったりするもののことですね。

 

森田 そういうことです。釜に残る、ボイラーに残る、配管に残るミネラル分。それが蓄積しちゃうと、微生物的なリスクにもなりますし、ミネラル度が高まっていくと配管に穴が空いたりするんですよ。究極的に言ってしまうと塩類なので、設備的には嬉しいことないですよね。水そのものが良くも悪くもパワフルで白く残る部分はそのままにするとダメージになるので、洗浄し、取り除いてから使ってる、というのはありますね。

 

—— でも、“ビール”に使う水としてはやっぱり良い水なんですね。

 

森田 とてもユニークなものがあるなとは思いますね。ビールの仕込みの水はやっぱり、この土地のキャラクターを大事にしてるので、基本的にはこのナチュラルな配合に足りないものを足すだけにしてるんです。

 

—— うんうん。それが、この場所でビールを造る良さだったりするんですよね。違う水で造ってみたことはありますか?

 

森田 あるんですよ一回。ミネラルウォーターで 20 リットルくらい造ったことが。その時は、たまたまかもしれないんですけど、あんまりね、酵母活性がよくなかったのと……、エステルが出なかったからなのか、なんか平板なビールになったかなぁ。

 

—— あまり理想の味にはならなかったんですね。

 

森田 何も入ってない、軟水で仕込んだんですよ。でもなんか、薄っぺらかったんですよね。水そのものだとそこまでの差は出ないとは思うんですけど、ビールの仕込みから発酵のプロセスを経て、その差が大きくなってる感じはしましたね。何故かはよくわからないですけどね。

 

—— なるほど。ミネラル分の高い水って、エールに向くって言われてますけど、実際の感覚値としては、どういった点がここで造るからこそ出る良さなんでしょうか?

 

森田 う~ん……なんですかねぇ。

 

岡 でも、ミネラルウォーターをウォータートリートメントしたからって、同じ味にはならないんだろうねぇ。

 

森田 うん、こうはならないと思いますね。そこが面白いとこですね。まぁ、水を構成している要素って、けっこう多いですからね。

 

岡 たぶんカルシウムだけじゃないからね。

 

森田 ビールに入れるとすると、硫酸塩、塩化物、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、…あと亜鉛か。多くても 6 ~ 7 種類ぐらいを後からビールに添加することはあるんですけど、水の構成要素ってほんとはもっと、たくさんですから。それを全て真似するっていうのは、やっぱりうまくいかないですよね……。

 

—— 毎回試行錯誤っていうところはあるかもしれないですよね。

 

森田 でも、全く同じレシピで、全く同じ設備で造っても、水が違えば絶対に違うビールになると思いますね。それは前回のその、ミネラルウォーターだけで造ったビールのテストと一緒で。だから、基本的にうちのビールは、丸くて厚みのあるビールが特徴だと思うんですよ。それは、酵母の出すエステルによって与えられてるボディだというのが大きいと思ってるんですけど…。僕たちらしいエステルっていうのはやっぱり、うちの水があったからだと思うんです。

 

—— 水自体の波はないですか?

 

森田 たぶん、あります。実際、製品にすぐわかるレベルで出る感じのものはないですけど、データ的にはありますよ。この時期はたぶん、一番ミネラルが上がってくるんじゃないかな。見ると、高い時期だと硬度が 200 超える時もあるし、低ければ一応 100 前半くらいの時も。採取した時のデータによるんでしょうけど。

 

—— 雪解けだからなんですかね?

 

森田 …なのかなぁ? 多少の揺れはありますよね。

 

岡 そう。面白いね、生きてるみたいだねぇ。

 

—— 面白いですね。浅間山は活火山だから、そういう意味でも何かしらが作用して、水の性質も変わったりするのかもしれないですね。

 

森田 変わりそう。水温は変わりそうですよね。水温が変われば、ミネラルの溶出率もたぶん変わりますし。うちのは、甘くて厚みのあるビールですよね。たとえば、レシピ上とかセオリー上ドライで、スッキリしたものにする設計をしても、うちらしいボディが残るんですよ(笑)。

 

—— うんうん。なるほど。

 

森田 ははは(笑)。どうやっても、ね。

 

岡 ちょっとイギリスっぽい。

 

森田 もう、それがとっても良い飲みごたえというか、個性になっていると思っているし、気に入ってるところのひとつですね。

 

 

—— 他のブルワーさん同士で情報交換もされると思うんですけど、水について話したことってありますか?

 

森田 ありますよ。

 

岡 全体的に他社さんのビール飲むと、軟水だなぁって感じることはありますよねぇ。

 

森田 よくある。

 

岡 ちょっと羨ましいと思ったこともあるし。

 

—— また違った味だと感じるんですか?

 

岡 そうそう。もうスルスル入る感じがね。

 

—— 「他人の芝生は青い」ですね。

 

岡 そうですね(笑)。その逆もあるのかもしれませんけどね。

 

森田 でも、他社さんのビールで、水に鉄っぽさを感じること、ありますね(笑)。ミネラルの鉄というか。

 

 硬水自体がホント少ないからね。ここの醸造所をちょっと南に下ると、八ヶ岳山系に入るともう全部軟水なんですよ。ホントこの辺りだけなんです。

 

森田 あとうちと同じ硬水なのは、この辺りだと小諸と御代田ですかね。

 

岡 そうそう。だから浅間山の山麓でもこのエリアだけです。

 

森田 佐久の南の方に酒蔵がいっぱいあるじゃないですか。あれって、軟水だからですよね。

 

—— そうなんですね。日本酒の場合は軟水じゃないと造りづらいってことなんですね。

 

水の飲み比べ

今回「水」にフォーカスを当てたインタビューということで、広報担当の根来さんも加わり、水の飲み比べをさせていただけることになりました。ヤッホーのビール造りに使っている浅間山の水と、市販のミネラルウォーターとの違いを飲み比べしてみました。

 

—— このミネラルウォーターはヨーロッパで採れた水ですが、それにしては珍しく軟水ですよね。硬度は 60 mg/lです。

 

森田 60 mg/l ってことは、東京と一緒だよね。

 

—— なるほど。

 

岡 では早速飲み比べしてみますか。どっちが浅間山の水かわからないように、見ないで試してみましょうか(笑)。

 

—— わかるかなぁ……。

 

根来さん(以下、敬称略) たぶん、わかります!

 

—— とりあえず、飲んでみます。

 

 

岡 ……全然違う。

 

—— すごい。全然違いますね。でも、違いはわかるんですけど、どっちが浅間山の水なのかって判断するのがなかなか難しいですね……。

 

 

根来 口に入れた感じと飲み込む時の感触が違いますよね。

 

—— 口当たりがさらっとしているので迷いましたけど、飲み込む時にコロンって感じる方が浅間山の水……?

 

森田 正解! あ~でも、改めて飲んでみると、浅間山の水の方がやっぱりザラザラしてる。

 

—— 確かに! ザラザラしてる方が浅間山の水なんですね!

 

岡 ザラザラしてるよね。今飲み比べて難しかったかもしれないんですけど、水は温度によっても飲み心地は変わるかもしれません。温度が上がると、柔らかく感じるでしょうし。

 

—— 水の食感は、温度などにも左右されるんですね。

 

森田 でも飲み比べて難しかったっていう意味では、市販のミネラルウォーターのは薬品臭もないし、もともとの水もクリーンで綺麗ってことなのかもしれない。配管の臭いとか、殺菌の臭いというのは一切ないので。

 

—— 確かに。

 

岡 海外のブルワーと話したり、トークセッションを聞くと、日本は恵まれてるなぁって思いますね。浄水に関しても、いかにいい水を採ってくるかっていうのは、すごく大きなミッションなので。『どうしてる?』と聞かれて『うちは普通に採れてます』って言うとみんな『えぇ~?!』みたいな。

 

—— (笑)。アメリカなんかは基本、全部濾過みたいですしね。

 

森田 でっかいフィルターを通して、注水タンク抜けて流れてくる水を使っているみたいです。

 

—— そのコストもかかりそうですね。定期的に交換しないといけないじゃないですか。

 

森田 すっごいかかるんです。でもそれだけ水が信用できないってことなんですよね。

 

地域で循環するビール

—— 冒頭に少しお話ししたことですが、地元に根ざしたビールということで、今後さらに地域性を高めていきたいことってありますか?

 

岡 今日の「水」というテーマからは外れますけれども、浅間山の水を糧にした小麦やホップを育て、ビールを造り、出た廃棄物は畑に還しーーさらに、お客様へ販売させていただいた利益のうち、一缶につき1円は、軽井沢の自然保護団体に寄付をしています。完全に地域に循環するようなビールを目指していきたいと思ってるんです。寄付は創業から現在まで20年間続けています。

 

—— まさに地域に根ざしたものになりますね。今、『軽井沢高原ビール』に使っている麦芽は、軽井沢のものなんですか?

 

森田 麦芽はまだ輸入しているので、海外産です。でも小麦は、去年から農協さんとの取り組みが強くなってきたこともあり、地元・軽井沢のものを原料に取り入れています。「ゆめかおり」という品種です。

 

岡 でも、日本のクラフトビールのほとんどはやむなく、海外産の原材料を使っているんですよ。でも、今はまだ水と小麦だけだし時間はかかるんですけど、いつの日かこの土地で採れた水と、そこから産まれた農作物だけを使ったビールを造りたいと本当に考えています。去年からは新しくホップの栽培も始めてるんですよ。

 

—— そういった意味では、水は大事ですね。ビールに入ってる液体としての水だけじゃなくて。

 

岡 そうですね。

 

—— 麦の栽培って、技術的に大変だってことはあると思うんですけどそれだけじゃなくて、栽培したくても、いろんな制約やらしがらみもありますよね。穀物は特に。

 

岡 そうなんです。しがらみを超えると、今度は安定供給ができるか、コストはどうか。次に、ブルワーが実際に使ってみて、香味への影響はどうかとか。たくさんのハードルがあるんですね。だから、私達も含めて、殆ど全てのクラフトブルワーは、海外産の原材料を使っているのが現状なんです。ただ私たちは、『軽井沢高原ビール』のもともとの想いから考えて、今、原点に立ち返っているので。もう一度、この軽井沢で産まれて、軽井沢のゲストに愛されるビールを本気で目指して、取り組みを始めているんです。缶にも書かれている「for the town」とはそんな想いから生まれています。

 

—— 一缶の売り上げにつき1円の寄付をしているボランティア団体は、『ワイルドフォレスト』が出来た時に立ち上がってるんですか?

 

岡 そうです。その時から、ずっと寄付をし続けていて、寄付金は主に、軽井沢の自然環境の保護に役立てていただいています。

 

森田 クマがゴミ箱を漁ってしまうから、鍵付きのゴミ箱を設置したり、クマが里に降りてこないようにしようっていう自然保護活動をやっています。

 

—— 町のみんなが協力できたら、それって素晴らしいですよね。

 

 クマにとっても人間にとっても、お互いにハッピーだよね。

 

—— そういう意味では長年、地元環境を考えながら活動をされてきてると思うんですけど、やっぱり 20 年前と今とでは、地域の方の意識も変わっていたりするんですか?

 

 ゆっくりではありますが、変わってきてるとは思いますね。今では多くの方が、環境に非常に関心を持っていらっしゃる。それは、このビールが地元の方々にご好評を頂いていることからもわかるかと。その理由のひとつが、環境に対してのコンシャスであり、もしくはエシカルっていうか、どうせビールを買うのであれば環境に優しい、もしくは社会に対して何か貢献できることをしていこうというニーズが出てきてるのかなと思いますね。

 

森田 僕が他の地域から来た人間だからだとも思うんですけど、もともと軽井沢に住んでた地元の人も、相当環境に配慮してるとは感じますね。

 

—— そうなんですね。

 

森田 自然が多く残っていてそれ故にこの地を気に入っている方が多いので、変えることに対してコンサバティブ。そういう意味では、環境に関しても、昔からの状態を守りたいっていう意識がすごく強い地域だなっていうふうに思います。軽井沢なんか特にそうですよね。

 

 家建てるのも嫌がったり。

 

森田 木を切るのもね。でもそれほど、環境を大事にしている地域だということなんだと思います。

 

—— そんな、軽井沢を大事に思っている人たちに飲んでもらいたいという思いで、ビールを造っているんですよね。

 

 そうですね。地域に根ざしたビールっていう姿勢もそうだけど、飲んで余韻を感じるビールというか。

 

—— 確かに。余韻も感じますし、それにちょっと甘みもありますよね。先ほど、「軟水で造ったと感じるスルスル入るビールをちょっと羨ましく感じる時もある」みたいなことおっしゃってましたけど。でも基本的に、冷涼なこの地域で飲むビールっていう意味では、暑い夏場に、あ~って飲むようなビールっていうよりは、夏でもけっこう涼しいこの地域性にも合ってるビールなのかなって思いました。

 

森田 「爽やかに」とか「スッキリ」楽しんでほしくて設計してるビールもありますが、基本的には僕らのビールはガブガブ飲む、っていうメッセージじゃないですからね。

 

 どのシーンでもゆっくり楽しんでいただきたい。

 

—— 温泉に入った後に飲みたいですよね。お風呂上がりで身体は温かくて、外は風が吹くと涼しいような環境の中で、もうちょっとゆっくりしたい時に、「ふぅ~」って飲む感じがとても合うと思います。

 

 いいですねぇ。

 

森田 なるほど……あんまり意識したことないかもしれないんですけど、確かに蒸し暑かい気候の場所で、風呂上がりにあんなぬるいリアルエール飲みたくないよね。

 

 そうそう(笑)。軽井沢の冷涼で爽やかな気候だからこそ、合うビールなのかもしれないねぇ。

 

—— 特に別荘の方は、それを求めに来るので。それが非日常っぽくなるんでしょうね。私が嬬恋に住んでいた時も、日常の手の届く範囲にこの環境があるのはすごい贅沢だなぁと思いながら過ごしてはいましたけどね。

 

 そうですねぇ。結果として、その土地の気候であったり、水に合っているのが不思議だと思います。その土地に合うものが、自然とできてる。

 

—— それに、自分たちが飲みたくないものは造らないですしね。

 

森田 その通りかもしれない。これがジトジト暑かったらもっと違うビール造ってるかもしれないなぁ。

 

 もうちょっと南に醸造所作ってたらね(笑)。

 

森田 そういう意味では、うちのビールはスッキリして飲みやすいんでしょうけど、全体的に柔らかみがあってふくよか。

 

—— そうですよね。本当、ふくよかな時間を与えてるんだなぁと思います。

 

 まさにそうかもしれないですね。

 

—— そんな豊かな時間を過ごしてほしいという願いが、『軽井沢高原ビール』には凝縮されているんですね。とても貴重なお話、ありがとうございました!

 

 

【編集後記】

普段当たり前に口にする「水」ですが、ビール造りにおいても重要な役目を果たしていることが今回のインタビューで改めてわかりました。一言で「水」と言っても、その成分がビール自体に与える影響や、その地に住む人、軽井沢の別荘で時間を過ごしにやって来る人にとっても重要な役目を果たしているのです。そして、『軽井沢高原ビール』が目指す「地域に還元するビール造り」の姿勢は、味はもちろん、水を与えてくれる環境への感謝の証なのだと改めて感じました。